農作業にもシルバーカー
心臓が悪い祖母とシルバーカー
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お祖母ちゃんのシルバーカーの話をつづります。
90歳を過ぎても、元気に毎日畑仕事に精を出していたお祖母ちゃんでした。
季節の野菜や果物を作って、花を育てて、仏様にお供えする、
毎日は早寝早起きで半分自給自足くらい、自然な暮らしをしておられました。
どこも体に悪い所はなく、鍬で畑を耕して、土を作り、
蔓が伸びるようにと支柱を立て、藁を敷いたり、と毎日忙しい生活をされていました。
そんなお祖母ちゃんでしたが、かれこれ二十年前に、膝を痛めたことがあって、
膝にボルトを埋める手術をした経験を持っていました。
毎日よく歩き畑仕事をしていますので、足は健康そのものです。
しかし、心臓は、昔から悪くてニトロ等を持ち歩いて、
医者からはしんどい時には休むように、と言われておりました。
しかし、休んでなんかいられません。家から畑までせっせと歩き、
雨の日には、子供や孫、ひ孫の為に、お料理を沢山作って、親戚中に配って歩くという忙しさです。
そんな健康な体でも、九十歳を過ぎた頃に、ペースメーカーを入れたいと本人が言い出したのです。
何か、体に心配が有ったのでしょう。お医者様の意見では、
ペースメーカーを入れても、心臓は良くならないタイプの状況だったという事です。
シルバーカーを押して歩けば転倒しないのではないか
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また、手術をして、何日も横になった状態こそが、
高齢なお祖母ちゃんにとっては命取りになりかねないのです。命と言っても、足の元気の事ですが。
先ず、転倒してはならない、とお医者様が言われました。
そして、どうしても畑へ行きたいのであれば行っても良い、と言われました。
そこで、親戚の者たちは考えて、シルバーカーを押して歩けば
転倒しないのではないか、という結果に至りました。
早速、普段から農作業の道具や、野菜の種を買いに行くお店に、
シルバーカーも置いてあるか、見に出かけていかれました。
そして、息子夫婦がお祖母ちゃんに大きなシルバーカーをプレゼントされたのです。
とても、ずっしりとして、大きかったのです。
疲れれば、腰かけられるタイプですが、大きな荷物入れには、
農作業用具がたっぷりと収納されてありました。
孫の私が、「少し押させて。」とシルバーカーを押してみると、これまた、重いのです。
ずっしりと、重い、鉄を押している感じがしました。
私が押させてもらったのは、アスファルトの舗装された道でした。
しかし、お祖母ちゃんは、そこから、ずっと歩き続けて
コンクリートの道もまた歩き、畑の土道へ入っていくのです。
シルバーカーにより足腰は鍛えられ
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一人で歩いている時よりも、ずっと体は鍛えられてしまったと思います。
転倒はしないでしょうが、若人には、重すぎて、重荷です。
しかし、お祖母ちゃんは、息子に買ってもらったのだし、こける心配がないからね、
と上機嫌で毎日家から畑までの道を往復されておりました。
暑い夏の日も、寒い冬の日も、元気にシルバーカーで歩いておられました。
そして、「お迎えが来る時には、楽に行きたいわ。」と稀にこぼしておられたのです。
シルバーカーにより、足腰はさらに鍛えられて、日に日にお祖母ちゃんは
元気になっていきました。筋肉も、若人より、当然あります。
我慢強さも、当然ばっちりあります。シルバーカーには、土が挟まったりして、
購入した当時よりも、更に重く感じられる事が重なっていたのです。
そんな毎日を送りましたが、五年目に、持病の病で、ふっと逝ってしまわれました。
ある日突然、逝かれたので、どこか、旅行にでも行ってしまっていて、
長い間会えない、と言う感覚になります。
亡くなる前日まで、天気にシルバーカーで畑まで往復されていた姿を今でも思い出します。
重くても、問題ない方も、居るのですね。
ちなみに、もっと軽い小型のシルバーカーを見た事がありますよ。
しかし、農作業に耐えられる丈夫さも、お祖母ちゃんには必要だったのでしょう。