- 車椅子のお店YUA
- 標準型車椅子に替えて行動範囲が広がりました。
標準型車椅子に替えて行動範囲が広がりました。
リクライニング車椅子を使用していた母
-
母は60歳を超えたころに脳梗塞を発症し、歩くことができなくなりました。 現代の60歳はまだまだ現役の人も多いくらいで、母も心は若いころと変わらないくらい活発でした。 体が不自由になったとはいえその気持ちは衰えず、体調がよくなってくると、 お友達とランチに出かけたいとか、旅行に行ってみたいなどというようになりました。
しかし、私はためらいました。当時母はリクライニングタイプの車椅子を使用していたからです。 その車椅子は背もたれを倒すことができ、 とても快適に過ごせるのですが、段差には弱いという欠点がありました。 平地ではとても具合が良いのですが、たった一段の段差でも上ることができないのです。
たとえば母のお気に入りのカフェは入口に段差があるのですが、 入店するためには車いすを抱え上げてもらってその段を越えなければなりません。 それにデコボコ道にも大変弱く、砂利道などは車輪がはまってしまって進めないため、 秋の紅葉狩りなどは行けないだろうと思いました。
標準車椅子にすれば出かけられる
-
そのことを理学療法士の先生に相談すると、 「じゃあ、標準型の車椅子に乗れるように頑張ってみましょう」 と言ってくださいました。 「そろそろいけると思うんですよ」と。 母は足だけでなく上半身にも麻痺があり、まっすぐに座ることが難しいのです。
だからこそリクライニング車椅子を使ってきました。 ところが現在、だんだんと回復しつつあり、筋力もついてきたので、 練習すればまっすぐに座れるようになるだろうというのです。 まっすぐに座れるようになれば、リクライニングのない標準型の車椅子に乗ることができます。 標準型は少々の段差なら乗り越えることができます。
前輪を上げて進めばデコボコ道にも対応できるだろうと先生はいいました。 そこで福祉用具の業者さんに連絡をして、標準型車椅子をレンタルしてみました。 車に乗せることも考えて、なるべく軽量のものを持ってきてもらいました。 早速、母を座らせてみると…「なんだか座りにくい」と母はいいました。 全体的にぐらぐらして、不安定でした。背もたれがまっすぐだと、 上体を自分で支えて座る必要がありますが、母にはまだそこまでの筋力がなく、 どうしても麻痺のある左側に体が傾いてしまうのです。
標準型になれるための練習の末にカフェに
-
私は母の左わきの下に丸めたタオルを詰めてみました。 すると、さっきよりはまっすぐに座れることが分かりました。 「少しずつ慣らしていけば上手に座れるようになるんじゃないでしょうか」 と先生はいいました。 そこで毎日少しずつ、標準型に座る練習をしました。
デイサービスに行くときは普段はリクライニング車椅子ですが、 家でくつろぐ時間は標準型に乗る、といった具合です。最初は30分から始めました。それ以上座っていると 「疲れた」「お尻が痛い」などいろいろ文句を訴えてくるからです。 一週間くらい経つと慣れてきたのかその文句が減ってきたので、 30分を45分に、それから1時間にと、ちょっとずつちょっとずつ増やしていきました。 一か月もすると、2、3時間は座っていられるようになりました。 最初のときのように上半身がグラグラすることもなく安定して座っていられます。
そこでお友達を誘ってランチに行くことにしました。 母が元気だった頃、気に入って通っていたカフェのランチです。 前に述べたように入口に段差があることから、 病気をしてからは一度も来たことがありませんでした。
車椅子での段差の乗り越えに成功
-
段差は思ったより高く、玄関の上がり框くらいの高さでした。それでも 「よいしょ!」と力をこめて上げると、車椅子はちゃんと段を上ることができました。 「やった、入れた!」と母は歓声をあげました。 そして「ずっと食べたかったの」といって久々のカフェランチを楽しむことができました。 カフェの入口だけでなく、街を歩けば小さな段差がたくさんあることに気づきます。 スロープの登り口にも僅かですが段差があるくらいです。 リクライニング車椅子を使っていた頃はそんな些細な段差に悩まされていたのですが、 標準型車椅子に替えてからはへっちゃらで移動できるようになりました。 去年の秋には念願だった紅葉狩りにも行くことができました。 お寺の砂利道はそれなりに大変でしたが、それでも砂利の薄いところを選び、 前輪を上げて走行するとなんとか進むことができました。 標準型車椅子に変えてからというもの母の行動範囲はぐっと広がったといえます。 「こんどは旅行に行けるようになろう」 母はさらなる目標を掲げ、毎日リハビリに励んでいます。