車椅子のお店YUA|常設車椅子で老人ホーム見学

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常設車椅子で老人ホーム見学

老人ホームの見学者

老人ホームの施設員
私は特別養護老人ホームの事務員です。 先日施設の見学にいらしたおばあちゃんがあまりに前向きで感動してしまったのでお話しします。
ある日施設の見学に行きたいという電話がありました。 いつでもいらしてください、というとこれから向かいますとのこと。 念のため入居の申し込み用紙やパンフレットを用意して待っていると、 おばあちゃん4人組がやってきました。少しおばあちゃん(70代くらい)と いった方3名と本当のおばあちゃん(80代くらい)といった方が1名。 ああだ、こうだと4人でお話しされながら玄関でスリッパに履き替え施設の中へ。
80代らしきおばあちゃんは足がお悪いのか、 それとも足が弱っているのかスリッパではちょっと危ない感じ。 施設を案内するとなるとかなりの距離を歩かなくてはならず危険です。
施設に常設してある車椅子を勧めたいところですが、 プライドを傷つけてしまっては申し訳ありません。 しかし、このまま歩いていただくのも危険だしお疲れになると思い、 「施設内はかなり広いのでもし良かったら車椅子をご用意いたしましょうか?」ときくと、 「そうねえ、いずれ私も車椅子になるでしょうから練習しようかしら」 と、快くというかノリノリで車椅子に乗車されました。

自ら依頼して見学にこられたご年配の女性たち

電話する女性
施設を見学に来られたお話を伺うと、80代おばあちゃんが、 そろそろ自分の身の振り方を決めたいから老人ホームの見学に連れていってほしいと 親戚の人に依頼して今日の見学会となったそうです。
実は、老人ホームの入所は入所される方が納得していないことが多いのです。 家族の介護の負担が大きくてやむなく入所。 家族がいない方が体を悪くされて介護者がいなくてやむなく入所などなど。 事前の見学に入所者ご本人がみえる場合は、家族が連れてきて、 「ほらこんなにいいところだし、お友達もたくさんできそうじゃない?」 なんて感じで入所の説得をされていることが多いのですが、 車椅子に乗ったおばあちゃんとその他3人のおばあちゃんたちは、 「きれいでいいねえ」とか「明るくていいねえ」とか施設内を あちこち覗いてみては旅行先のホテルの品定めのような会話をしています。
車椅子のおばあちゃんは「難しいわねー」などと言いながらも車椅子を自操。 「ここで食事をいただくのね?」「自分で食べられなくなったら食べさせてもらえるの?」 「このお風呂は自分で入るタイプね?動けない人用のもあるの?」など質問されていました。 その様子を見ていて、この方はきっとずっとお元気なんだろうな~と根拠無く思ってしまいました。

自分自身での準備

ご年配の女性のイメージ
見学後車椅子のおばあちゃんは、ご自身で入所申し込み用紙に記入されました。 記入が終るとゆっくり車椅子から立ち上がりスリッパから靴に履き替えて帰って行かれました。 おばあちゃんの入所の条件は病気や認知症で将来介護が 必要となったとき(介護度が付いたとき)とのことでしたが、 やはり「このおばあちゃんが入所されることはないんだろうな」と思ってしまいました。
でも「こんな前向きなおばあちゃんが入所してきてくれたら楽しいだろうな」との願いもあります。 自分も含め、死ぬまで元気で家で過ごせたら…とは誰もが思うことでしょう。 でも実際にはケガや病気や認知症で自宅にいることが困難になってしまう場合もあります。 その時に備えて自分自身で準備をしておくことができますか?
私は考えたくも無いので準備もしないように思います。 そしてその時になったら子供たちに説得されてしまうのかも… そう思うと、おばあちゃん達の行動は素晴らしい心構えだと思えました。 こんなに明るく、気まずくない施設案内は初めてでした、 とおばあちゃんたちにありがとうございましたを言いたいです。
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