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押し手で変わる優しい車椅子

子供の頃の車椅子の病院生活

車椅子を押す看護師
車椅子と聞いて皆様は何を思い浮かべるでしょうか? 私は、持病で身動きできなくなっていた子供の頃の病院生活の中での事を思い出します。 私の病気は本来自分で意識する事もないくらい普通に生活できるものでした。 しかし1度、発症し生死の境をさまようという経験をしました。
その時は自力で動くこともままならず、変わらない 景色をただ見つめて精神的にも活動意欲がわかずに沈んでいました。 動く事も出来ずに同じ風景だけを見ているのはかなりつらいと思っていました。 ただそんな中、そう長い時間ではないのですがベットを離れる事が出来る機会もありました。
歩く事もままならないのにと思われるでしょうが、その時お世話になったのが車椅子でした。 看護師さんに押してもらって院内の検査室までの道のりを移動したり、 少し寄り道をして日向になっている廊下を進んだりしてもっらたこともありました。
私はこの病院生活まで車椅子とは一切無縁の人生だったのですが、 以前は「何て不便な乗り物なんだろうか?」と言う気持ちで見ていたことを思い出しました。 確かに自分で歩くようにはいかないですし、通れる場所も一定のスペースを確保する必要もあります。

足となってくれた車椅子に感謝

優しい看護師のイメージ
自分の力では動かせなかった私は、押してくれていた 看護師さんが荷物を取りに少し離れるといった際にはひどく心細くもなりました。 特に人通りが多い時間帯であったなら、椅子の高さで止まったままの 私の周りを足早に人がかすめていくのですから恐怖すら感じました。
しかし同時に自分では立つ事すらできなかった私が動く為の足でもありました。 全く動けない状態でいるよりも、こうして動ける事が どれだけ充実している事だろうと思い自身の座る車椅子の肘当てを撫でたものです。 その後私の病気は治療され、依存のように歩く事が出来るようになりました。
病院生活中私の足となってくれた車椅子に感謝しました。 それから10年近くして、私は医療事務系の学校に入学しました。 その中で私は再び車椅子とかかわる事になりました。 医療事務員と言うのは医療現場に密着した職務です。 そしてそこには多くの患者さんが来院します。
それは様々な症状の患者さんが受付に来て診察室や 病室へと案内するといった場面にも遭遇するでしょう。 その為の訓練の一環として、車椅子の乗り手と押し手を体験するという講習が行われました。

学生になって押してもらった車椅子の乗り心地

勉強中の学生のイメージ
私の中ではあの病院での車椅子生活が思い出されます。 不便な乗り物だと思っていたというのに、安心して 風景に視線を巡らせていた頃の記憶が思い出されました。
そして迎えた実習当日ですが、最初に私が乗る側だという 事で車椅子に座り動き出してみるとあの頃とは全く違う乗り心地に驚きました。 左右へフラフラしながらスピードも安定せず、 つんのめりになりそうになったり周りの通行人に接触しそうになったりしながら進んで行くのです。
正直、不安で仕方がありませんでした。 押しているのはクラスメイトで、体格は若干小柄ではありますが 看護師さんにもこのくらいの体格の方もいましたし安定したように思えます。 だったら慣れていないからなのかと思っていましたが、 押しているクラスメイトの様子を見ていると目的地の公園に続く道順と 「押し手」である自分の歩行スペースにばかり注意がいっているように思いました。
車椅子に座っている人と移動しているのではなく、1人で移動しているのだと思いました。 そうしている間に目的地に到着し、次は私が押し手となって移動する事になりました。

優しい気遣い気遣いと気配り

自走式車椅子
先ほどの様な不安は抱かせないようにしなくてはいけないと意識し、 クラスメイトが車椅子に座るのを見届けて押し始めます。 そして、ここにきてようやく先ほどの乗り心地について理解が出来たのでした。 慣れないせいもあるのかと思いますが考えてみれば人が1人乗っているのです。 それを腕だけで操ることなど出来るはずがないのです。
行き同様、クラスメイトも「揺れて怖い。 人とぶつかりそうで不安だ。」と乗っている最中に言っていました。 かつての病院生活で私は全く不安も感じず安心して移動していました。 思えば移動すること以上に看護師さん達は常に乗っている私を気遣い、 時に速度を緩めたり止まったり順路を選んだりして進んでくれていた気がします。
それでもという時は声掛けなどもしてくれていました。 本当なら自分の足で移動することが出来る、または、するはずの 行動が出来ずに車椅子に座っての移動と言うのは勝手が違い不安も多いものです。
そんな状態でも病院生活中だった私も含めた乗り手が 不安にならずにいられたのは、押してくださった方の 優しい気遣い気遣いと気配りがあってこそなのだと、その時改めて思ったのでした。
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