車椅子に集まる視線と落ち着ける場所
車椅子に集まる視線
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人間、なってみない事にはその人の本当の気持ちは分からないといいます。
車椅子の人と不自由のない人も、これにあてはまるのではないでしょうか。
これは昔、車椅子の友人と遊んでいた頃の話です。
車椅子の友人と遊びに行く時は、場所を色々考えました。
一番NGな場所が、土日祝日のショッピングモールです。
押しながら歩いていても、横で歩いていても気付くのはその視線の多さです。
こちら側の視点で言わせてもらうと、別に悪意はありません。
ただどうしても目立つので見てしまうだけで、邪魔だと思っている訳では決してありません。
しかし、見られている本人としては別です。
普段は人の注目など集めない人間だったのですが、
友人と歩いている(車椅子を押している)ととにかく見られましたね。
本当の気持ちは分かりませんが、障害があるない以前にあの視線は疲れます。
芸能人がマスクや帽子で歩くような気持ちと似ているかもしれませんが、
見せものにされている感が強いのです。
繰り返しますが、見ている方にそんな気持ち(悪意)はありません。
外出の度にあんな気持ちになっていては、出かけたくない気持ちも分かる気がします。
出かけたのはあまり有名でない観光スポット
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しかし普通の人以上に、車椅子の方の運動不足は深刻な事態を招きます。
私が普通に椅子に座っているだけでもある程度負担はあるのですから、
車椅子の方が動かずに同じ姿勢でいる事の負担はさらに上です。
運動するのが普通より辛いのに、しなければそれはそれで体が弱っていったり
おかしくなるというのは、私達には想像もつかないジレンマです。
結局どこをメインに遊びに行ったかというと、平日のあまり有名でない観光スポットです。
例えば伊勢神宮は有名過ぎていつでも人が多いですが、近くに隠れ名所があるならそっちへ。
温泉は貸切風呂がある所を選びつつ、隠れ家的なスポットを探しました。
元々観光にあまり興味が無かったのですが、今ではぶらり旅が趣味になりました。
桜や紅葉スポットでいうなら、意外に知られていない場所は多いのです。
地元公園等は咲いていても特に人がいないという所も多く、
誰もいない(少ない)花見・紅葉スポットというのも乙なものです。
歩きながらビールを飲んでいても、誰にも文句も言われませんし…。
一応大まかな解釈として、車椅子は歩行者(の体の一部)扱いなので、飲酒運転ではありません。
平日昼間に、飲酒しながら公園を歩いているのはどうなんだと言われると、
常識的にちょっと駄目かなとは思いますが、あの頃は馬鹿やったね…という思い出の一部です。
「見られる人の気持ち」を理解したショッピングモール
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勿論本人が買い物したいといえば、
街歩きはせずに、行く時は総合型のショッピングモールがメインでした。
今ではイオンが大型ショッピングモールを建てていますが、
当時はあまり大きい所は多くはなかったのです。
ただ、行く時間はある程度調整しました。
開店直後もしくは閉店前、当時私の仕事が平日休みだったのも幸いでした。
本人は人が多くても気にしないと言っていましたが、
果たしてそれはどうだったのでしょうか。
こちらを気遣っているのか、あるいは本当にそうなのか。
そればかりは、今でも永遠の謎です。
正直なところ、私が人の視線に全く慣れていないのもありました。
当時はどこにでもいる20代の男であり、決してモテるような容姿でもありません。
今思うと、私はあの時初めて「見られる人の気持ち」を理解したのでしょう。
結局友人は、転職と共に地元に帰っていきました。
実家の方がバリアフリー住宅にリフォームするという事で、
向こうで仕事を探そうという事になったのです。
今でもたまに会いますが、今は電動車椅子等が進化してきていて、私が押すという事はありません。
ただ買い物は殆どネット通販だそうで、昔より太っていました。
それはそれで大丈夫かなと思いますが、本人は楽しくやっているようです。