83歳の車椅子韓国旅行
韓国に行ってみたいと言う祖母
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今は亡き祖母の話です。韓流ブームの先駆け、
「冬のソナタ」のドラマが放映されていたころ、
当時83歳だった祖母もやはりヨン様のファンになり、
ビデオを繰り返し見たり私がお土産に買っていった
ヨン様が掲載された雑誌を嬉しそうに読んだり、
部屋にポスターを貼ったりしていました。
そんな折ヨン様の写真展が韓国で開かれると知った祖母が
「韓国へ行ってみたいなぁ、やっぱり若いうちに行っておけばよかったなあ。
でももう年をとってしまったから無理だ」とあきらめている言葉をききました。
若いころは出歩くのが好きで海外旅行へも何度も出かけていた祖母ですが
70代後半から足が悪くなり出歩くこともなくなったため、
行ってみたい気持ちはあるけれど行けない、無理だ、とあきらめていたのです。
そこで私ともう一人の孫で協力して、
祖母を韓国へ連れて行こうと計画しました。
移動のこと、宿泊場所の利便性や目指すべき
写真展の会場までの交通手段などを調べると
シルバーカーと車椅子を併用すればきっと旅行ができる、と考えたのです。
車椅子の祖母に丁寧にふるまってくれた方々
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空港内や町歩きなどは車椅子とタクシーを利用し、
ホテルの室内などではシルバーカーをつえ代わりに
利用しようとの計画を伝えると祖母は不安そうな
でもうれしそうな複雑な顔をしましたが私たちの強引な誘いに
一緒に行く決意をしたようです。あとからきけば、
もういつ死んでもいいと思っていたから
思い切って行くことにしたんだよ、と笑っていましたが。
私たちは祖母をできるだけ疲れさせないように空港までは車で、
広い空港の中での移動には車椅子を使用しました。
何よりも若い空港の係員のお兄さんがとても丁寧に優しく機内へと誘導してくれ、
(しかも優先搭乗で一番に飛行機に乗れたことがとてもうれしかったようです。)
韓国の空港へ着いてからも車椅子で出口まで案内してくれました。
祖母は「まるで皇室の人にでもなったかのようだ」
と周囲から優しく接せられたことに感激していました。
また、韓国はさすが儒教の国です、年配者、特に身体的に
ハンディがある祖母のように車椅子に乗っている高齢者は最も敬うべき対象だ、
という観念が全ての人に浸透しているようで、
ホテルのボーイさんやスタッフはもちろんタクシーの運転手さん、
買い物先での店主さんなど全ての人が祖母に対して優しく、
丁寧にふるまってくれたことに驚きました。
今でも強く残る祖母の思い出
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祖母の念願の「冬のソナタ」のヨン様の写真展はホテル内で開かれており、
ゆったりと時間をかけて楽しむことができました。
ヨン様の等身大パネルと一緒に写真を撮ったり、
CM看板に大きく映るヨン様と写真を撮ったり
抱きしめるようなポーズをとったりと、普段は見られないような
ちょっとおちゃめで恋愛にどきどきする若い女性のような
若返った祖母を見ることができました。日本からわざわざ見に来た、
と伝えると写真展の会場の方も大変喜ばれ、
よく来てくださいましたね、と祖母と握手をされていました。
会場限定でしか購入できないかなり分厚い写真集のほかに
ポスターやポストカードなどたくさんお土産を買って大満足で会場を後にしました。
旅行の楽しみの一つでもある買い物もデパート内の食品売り場や
免税店を選んでいったので車椅子でも何の問題もなく楽しむことができました。
ご近所へ配ると言っては山のように韓国のりやおかし、
キムチを買っていた祖母の楽しそうな姿が忘れられません。
帰りの空港から機内、自宅までも車椅子で移動できたからこそ
不便もなく楽しく旅を終えることができました。
その後はご近所さんへ自慢話のように韓国まで行ってきたことを
うれしそうに話す姿を見て、一緒に旅行ができて良かった、と感じました。
祖母が亡くなった今でも強く印象に残る祖母の思い出です。